入退室管理にICカードを使用する方法や導入時の注意点を解説
「入退室管理にICカードを使いたい」
「すでに社員証や交通系ICカードを持っており、入退室管理にも活用したい」
とお考えの担当者様へ。入退室管理には複数の認証方法がある中、オフィスでは社員証や交通系ICカードを用いた「ICカード認証」が人気を集めています。
ICカードは紛失トラブルの対処もしやすく、一定のセキュリティを担保しやすいのが魅力です。
この記事では、ICカードを使った入退室管理システムについて、その仕組みや特徴、メリットとデメリットを解説します。
▼このコラムを読んでもらいたい方
- ・入退室管理を行いたいと考えている担当者
- ・入退室管理で従業員が持っているICカードを活用したい方
- ・ICカード認証に興味を持っている方
▼このコラムを読んで得られる情報
- ・入退室管理におけるICカード認証の仕組み
- ・ICカード認証のメリットとデメリット
- ・担当者が知っておきたいICカード認証の規格
1.ICカードを使った入退室管理システムとは
入退室管理システムとは、「いつ、誰が、どこに入室した(退室した)か」を管理できるセキュリティシステムです。ICカードを使った入退室管理システムは、かざされたICカードをもとに入退室者を特定して、時間や入室場所などを一括で把握できます。
入退室管理システムにはほかにもさまざまな認証方法がある中、「ICカード」は手持ちの交通系ICカードや社員証などを鍵として使えるのがメリットです。利用者は、手持ちのICカードをかざすだけで鍵を解錠できるため、物理鍵を何本も管理する必要がありません。
仮にICカードを紛失・盗難してしまっても、クラウドタイプの入退室管理システムなら入退室権限を無効化でき、拾得者に不正利用されるリスクヘッジにもつながります。
万が一のトラブル時に入退室履歴をさかのぼってチェックできるため、昨今では多くのオフィスで入退室管理システムの導入が進んでいます。
2.入退室管理に使える主なICカードの種類
入退室管理に使えるICカードとして、主に普及している規格は大きく分けて2つの種類が存在します。
- ・FeliCa(フェリカ)
- ・MIFARE(マイフェア)
カードリーダーによっては、上記のどちらかにしか対応していないモデルがあるのも事実です。ICカードを使って入退室管理を行いたい場合は、ICカードを準備する前に上記規格の違いについてしっかりと把握しておきましょう。
ここでは、入退室管理に使われる主なICカード規格の特徴ついて、順番に解説します。
2-1.FeliCa
FeliCa(フェリカ)はソニーが開発した非接触型ICカードの規格です。高い安全性と素早いデータのやり取りが特徴で、日本国内で広く使われています。おサイフケータイやPASMO、Suicaといった交通系ICカードにも採用されていて、身近なアイテムとして流用しやすいのもポイントです。
FeliCaには「FeliCa Standard」「FeliCa Lite-S」の2種があり、社員証などに用いられやすい「FeliCa Standard」はICカード類のなかでも優れたセキュリティを誇ります。一方で、「FeliCa Lite-S」はFeliCaのスピーディな認証速度は据え置きなまま、作成コストが安価なため入退室管理に使うICカードとして優れています。
一般的に、FeliCaを使った専用ICカードを発行して入退室管理を行う場合は、以下の使い分けでコストの最適化を図るケースが多くなっています。
「雇用流動性が高く、入退室管理のコストをできる限り抑えてICカードを発行したい」
→FeliCa Lite-S
「オフィスの要所など、入退室管理のセキュリティを高めてICカードを発行したい」
→FeliCa Standard
2-2.MIFARE
MIFARE(マイフェア)はオランダの企業が開発した非接触型ICカードの規格で、国際的に利用できます。製造にかかるコストはFeliCaより安く、世界でもっとも普及している規格です。
FeliCaに比べて暗号機能はいくつか劣ってしまうものの、必要な機能を最小限に抑えて搭載しているため、コストダウンを実現しています。大量生産も可能で、世界的に見ても入退室管理に使われるICカードの規格として知られています。
3.入退室管理にICカードを使用するメリット
入退室管理にICカードを使用するメリットは以下の3つです。
- ・物理鍵と比べて複製されにくい
- ・生体認証などと比べて導入コストが安い
- ・社員証など既存のICカードを利用できる可能性がある
それぞれについて、順番に解説します。
3-1.物理鍵と比べて複製されにくい
ICカードに搭載されているICチップは偽造が大変難しく、簡単には複製できません。物理鍵のように合鍵を作られるリスクが低く、オフィスのセキュリティを高められます。
また、ICカードの暗号化された固有IDを利用すれば、入退室権限も管理できます。ICカードごとに入退室できるエリアの設定を変更でき、物理鍵より高いセキュリティを構築できる点もメリットです。
ICカードは紛失リスクが残ってしまうものの、管理者が該当のICカードを無効化すれば悪用されるリスクもありません。そのため、物理鍵と比べて複製されにくく、拾得者の悪用も防ぎやすいのがICカードを用いた入退室管理のメリットです。
3-2.生体認証などと比べて導入コストが安い
ICカードによる入退室管理は、生体認証(バイオメトリクス認証)よりも導入コストを抑えられます。生体認証は指紋や目の虹彩、静脈や顔といった身体的特徴を利用する認証で、指紋や静脈を識別できる認証機器が必要です。
この認証機器は高額になりがちであるため、生体認証はほかの認証方法よりも導入コストが上がります。一方で、ICカードによる入退室管理はICチップを読み取るカードリーダーがあれば導入できるため、生体認証よりコストが安くなります。
このようにICカード認証では、物理鍵やテンキー類よりも一定のセキュリティを確保しやすく、加えて生体認証より導入コストも抑えられるため、コストパフォーマンスに優れたセキュリティを実現しやすくなります。
3-3.社員証など既存のICカードを利用できる可能性がある
入退室管理にICカードを使うメリットに、「社員証など既存のICカードを利用できる」点は外せません。入退室管理システムによっては、社員証やビルの入館証、交通系ICカードなどのICカードをそのまま利用できる可能性があります。
個別にICカードを新規発行する必要がなく、コスト削減につながる点は大きなメリットです。
ただし、入退室管理に使われているICカードリーダーによっては、対応しているICカードチップに制限が設けられている可能性も。既存のICカードを利用する場合は、規格を確認した上で、対応したカードリーダーを選びましょう。
4.入退室管理にICカードを利用するデメリット
入退室管理にICカードを使用するデメリットは、以下の2つです。
- ・カードの貸し借りによる不正利用のリスクがある
- ・入退室のログデータが消えるリスクがある
それぞれについて、順番に解説します。
4-1.カードの貸し借りによる不正利用のリスクがある
ICカードは、本人の意思で簡単に第三者との貸し借りが可能です。たとえば、従業員AがICカードを忘れて出社した時、従業員Bに借りて入室するケースは容易に想定できます。
人物の特定はICカードを通して行われるため、「入室したのは従業員B」と判断されてしまい、適切な入退室管理を実現できなくなってしまうのも事実です。
加えて、ICカードはカードごとに入室可能なエリアの権限を設定できます。上司や役員のICカードを使えば、本来入室できないドアにも入室できてしまいます。
物理鍵と同じく、持っている本人に管理が委ねられる点はICカードで入退室管理を行うデメリットです。
ICカードの貸し借りによる不正使用は、暗証番号や顔認証など、ICカード以外の認証方法と組み合わせる「多要素認証」によって防げます。多要素認証はアクセス管理のセキュリティ性を高める方法として、政府発行の情報セキュリティガイドラインでも推奨されている方法です。
参照:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第3.1版 P.52
4-2.入退室のログデータが消えるリスクがある
ICカードによる入退室記録は、ログデータとしてシステムに保存されます。しかし、何らかのトラブルで管理しているデータが消えるリスクがあります。
特に、入退室管理システムと勤怠管理システムを連携している場合は、ログデータの消失に大きなリスクが伴うのも事実です。
そのため、ログデータを管理しているサーバーやパソコンにも、適切なセキュリティ対策が求められます。ログデータが膨大で自社管理が難しい場合はクラウド上のストレージやサーバーに保管する「クラウドバックアップ」がおすすめです。災害時や間違ってデータを削除してしまった際、クラウド上にバックアップデータがあれば簡単に復元できます。
なお、クラウド型の入退室管理システム「ALLIGATE」なら、入退室ログを漏れなく専用クラウド上に保存できます。自社サーバーに何らかのトラブルが起きてもログを随時チェックできるため、セキュリティと利便性を担保しやすいのがメリットです。
5.ICカードを使った入退室管理システムを導入する流れ
ICカードを使った入退室管理システムを企業に導入する場合、主な流れは以下の通りです。
- ・運用方法や設置個所などを決める
- ・見積もりを取り、導入システムを決める
- ・設置工事・システムのセットアップを行う
それぞれについて、順番に解説します。
5-1.運用方法や設置個所などを決める
ICカードリーダータイプの入退室管理システムを導入するにあたり、まずは運用方法や設置場所を決めます。部外者の侵入防止や内部犯罪の防止、安全なセキュリティ体制の構築など入退室管理を行いたい目的を明確にして、それに合わせた運用方法を策定します。
入退室管理システムの具体的な運用方法として、以下の項目も明確に決めましょう。
- ・どのようなログデータを取得するか(入室のみ、入退室の両方)
- ・どの扉に入退室管理システムを設置するか
- ・認証方法はどれにするか(ICカードのみ、ICカード+暗号認証など)
自社のドアに設置できるか、希望する認証方法が行えるかといった項目で、候補となる入退室管理システムを複数ピックアップします。
5-2.見積もりを取り、導入システムを決める
ICカード対応の入退室管理システムをいくつかピックアップしたら、見積もりを依頼します。自社のドアに設置可能なのか、工事の内容は問題ないか、自社の希望に合うのか、自社にはどのような運用方法が合っているかを各メーカーに聞き、機能やサポート、コストで比較して希望に合う入退室管理システムを選定しましょう。
5-3.設置工事・システムのセットアップを行う
導入する入退室管理システムが決まれば、設置工事・システムのセットアップを行います。ICカード認証の場合、この設置工事の段階で該当のドアやドアの付近の壁にカードリーダーを設置します。その後、運用テストを行い、問題がなければ導入スタートです。
入退室管理の担当者は、システムの使用方法や管理画面の操作を習得する必要があります。
6.入退室管理にICカードを利用する際の注意点
入退室管理システムにICカードを利用する場合は、以下の3つに注意してください。
- ・複数のICカードを重ねて使用しない
- ・ICチップの物理的な破損や磁気の干渉を避ける
- ・対応しているICカードの種類を確認する
それぞれについて、順番に解説します。
6-1.複数のICカードを重ねて使用しない
複数のICカードを持っている場合、重ねて使用しないよう注意してください。ICカードを重ねたままでは、カードリーダーがデータを正しく読み取れない可能性が高まります。また、ICカードを重ねると磁気が弱くなり、通信機能が低下したり、認証に失敗するリスクが上がったりします。
複数のICカードを1つのパスケースに収納する場合は、2つのICカードの間に電磁波の干渉を防止するセパレーターを挟むと干渉を防げるのでおすすめです。
6-2.ICチップの物理的な破損や磁気の干渉を避ける
ICカードは折り曲げたりぶつけたりしないように注意してください。内蔵しているICチップが破損すると、カードリーダーで読み取れず、入退室できません。ICカードはプラスチック製が多く、物理的に破損する可能性もあるため、取り扱いには注意するよう周知する必要があります。
また、ICカードは周辺デバイスの磁気による影響を受けます。可能性は低いものの、例として手帳型スマホケースなどに収納したICカードが、フラップを留める磁石やスマホ本体の磁気を長期に浴びてカードの劣化・故障を招いてしまうリスクも。
とはいえ、磁気カードに比べると、非接触型ICカードは磁気による故障リスクが低いのも事実です。多くの故障は外圧による内部破損が多いため、ポケットなど折れ曲がるような環境下に収納しないよう管理を徹底する必要があります。
6-3.対応しているICカードの種類を確認する
自社ですでに使用しているICカードを入退室管理に使用する場合、FeliCaまたはMIFAREのどちらの規格のICカードかを確認しておきましょう。入退室管理でICカード認証を行う場合、ICカードの対応しているシステムを導入する必要があります。
非対応のICカードリーダーでは入退室管理が行えず、新規で社員証等のICカードを発行する手間がかかってしまいます。「既存のICカードを流用して導入コストを抑えたい」と考えている場合は、対応しているチップについてしっかりと確認するのがベストです。
7.まとめ
入退室管理でICカード認証を行う場合について、その特徴やメリットデメリット、注意点をご紹介しました。
交通系ICカードや社員証などすでにICカードを持っているケースは多く、それを入退室管理に使えば手間やコストの削減につながります。オフィスの入退室管理には特に向いているため、ICカードに対応したシステムを導入する企業は少なくありません。
クラウド型入退室管理システム「ALLIGATE」は、FeliCa・MIFARE両方に対応しています。ICカードで瞬時に解錠でき、紛失・複製リスクから解放されセキュリティの向上につながります。
ICカード認証による入退室管理システムの導入をご検討の方は、ぜひALLIGATEまでご相談ください。